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仙台地方裁判所 昭和48年(行ウ)4号 判決

仙台市長町字茂ヶ崎九番地

原告

佐藤国雄

仙台市長町四丁目七番一五号

被告

仙台南税務署長

林一郎

右指定代理人仙台法務局訟務部付

仙波英躬

訟務専門職 佐藤毅一

鍋島正幸

仙台国税局大蔵事務官 和泉昭一

高橋秀夫

仙台南税務署大蔵事務官 伊藤良三

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は

1  被告が昭和四六年六月二九日付で為した、原告の

(一)  昭和四三年度分総所得額を一、五八七万六、五〇〇円とし、確定納税額七〇七万九、四〇〇円、重加算税二四七万七、六〇〇円を賦課した処分全部

(二)  昭和四四年度分総所得額を三〇七万八、四四七円とし、確定納税額六〇万一、五〇〇円、無申告加算税六万〇、一〇〇円を賦課した処分全部

(三)  昭和四五年度分長期譲渡所得申告四〇五万六、九一九円、納税額三九万二、〇〇〇円を、長期譲渡所得一、四三四万一、五一〇円、納税額一四二万二、六〇〇円と更正し、過少申告加算税五万一、五〇〇円を賦課した処分のうち増差額金の一部および過少申告加算税額の全部

をいずれも取消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする

との判決を求め、その請求の原因として

1  昭和四三年度分について、原告は、仙台市原町苦竹切替五〇番の三宅地三三〇・五七平方メートルを訴外いすゞ自動車株式会社に売却した所得を有するとして前記処分が為されたものであるが、右土地は訴外阿部義男の土地であるにもかかわらず、訴外渡辺清五郎が勝手に原告名義に登記したものであり、これは右渡辺の承継人からいすゞ自動車に売却されたものであつて、その代金は原告の所得ではない。

2  昭和四四年度分について原告は、仙台市岡田字砂原一番地の三(保安林)他を訴外株式会社ニユーピツチから代物弁済として取得し、これを他に売却した所得を有するとして前記処分が為されたものであるが、右土地は右訴外ニユーピツチの名義になつていたが真実は訴外株式会社海浜モーテルの所有であり、右訴外ニユーピツチから他に売却されるおそれがあつたため、佐藤チヨノの名義で右土地を押えたうえ、右訴外海浜モーテルにおいて、これを売却したものであつて、その代金は原告の所得ではない。

3  昭和四五年度分については、仙台市東九番丁宅地を孝勝寺に二〇万円で売却した所得が申告もれであるとして前記処分が為されたものであるが、右土地は原告から孝勝寺に贈与したものであつて所得はない。また、仙台市長町字茂ヶ崎八番の三の一部土地を宮城テレビに売却した所得については、原告において適正な納税をすべく、必要経費の計算につき被告職員の指導を求めたにもかかわらず、被告はこれに応じないで一方的に処分をしたものである。

以上のとおり、各年度において課税対象となつた原告の所得はいずれも実際には存しないものであるから、前記各課税処分は違法であり、その取消を求める。

と述べ、なお、原告は本件で取消を求めている前記各処分につき昭和四六年七月二四日被告に対し異議の申立をしたが、右異議の申立は棄却され、その決定は同年一〇月一九日被告から原告に通知された。原告はこれに対し審査請求をしなかつたが、その理由はさらに不服申立をして時間と労力と費用を費やしたくなかつたからであると述べた。

被告代理人は、本案前の答弁として主文同旨の判決を求め、その理由として

1  本件訴は原処分に対する異議申立についての決定は経ているが審査請求についての裁決は経ていないので、不服申立の前置を欠いており、不適法である。

2  かりに、不服申立の前置を経ていないことにつき正当な理由があつたとしても、本件訴は原告が異議申立についての決定があつたことを知つた日である昭和四六年一〇月一九日から三カ月以内の不変出訴期間をこえて提起されたものであるから不適法である。

と述べた。

理由

原告の本件訴の提起が適法であるか否かについて検討してみるに、国税通則法第一一五条第一項によれば、本件各課税処分の取消を求める訴は、同条項但書の各号に規定する場合を除き、不服申立の前置として、異議申立についての決定と審査請求についての裁決を経なければならないものであるところ、原告は、異議申立についての決定は経ているが、審査請求についての裁決を経ていないことについては当事者間に争いがなく、右裁決を経ない理由として原告が述べるところは同法第一一五条第一項第三号にいう正当な理由に該らないことは明らかであつて、ほかに同条第一項但書の各号に該当する事実の主張はないから、本件訴は同法第一一五条第一項に違反し、不服申立の前置を欠いた不適法なものと言わざるを得ない。

のみならず、行政事件訴訟法第一四条第一項によれば、本件各課税処分の取消を求める訴は、原告が異議申立についての決定があつたことを知つた日から三カ月以内に提起しなければならないものであるところ、原告において異議申立の棄却決定を知つた日が昭和四六月一〇月一九日であることは当事者間に争いがなく、そして本件訴が提起されたのは法定の出訴期間をこえた昭和四八年四月二七日であることは記録上明らかであるから、この点においても本件訴は不適法なものであると言わなければならない。

よつて、原告の本件訴は不適法として却下することとし、訴訟費用の負担につき同法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 伊藤和男 裁判官 後藤一男 裁判官 小圷真史)

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